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Vol.2 中間検査の必要性
 今回で2回目の「整備工場現場の知恵」ですが、今年度の2月度、3月度の車検はいかがでしたか?
当社では1月度は何とか前年比100%越えを達成できました。2月度3月度は毎年車検台数が多いですよね。1日の車検台数が多い場合、やはりバタバタしていると、どうしてもチェックミスや抜けが発生してきます。現場の整備士にも抜けやミスが目立ってきます。現場でのミスは完成検査時にチェック出来れば良いのですが、中間検査などを省いて現場に任せる事が多くなっているのではないでしょうか?

 中間検査の時にチェックしていないと、とんでもない事になる場合があります。下記の事例は、自社ではございませんが、実際にあった話です。

 自動車は、軽自動車の車検をしている時に起こりました。この検査は立会い車検でお客様は会社でお待ちいただいておりました。お客様が、お車を持ち込まれ検査員は受付を開始し問診をいたしました。受付後、検査員と整備士(A)の2人で1台の軽自動車を受入検査している時に、整備士はタイヤを外し、リヤブレーキ・ドラムを外しました。その後、検査員とお客様でブレーキの残量の確認をしました。

 ここで、検査員はお客様に「ブレーキパッドがちょっと少なめですね。ブレーキオイルも汚れています。また、リヤブレーキのホイール・シリンダカップも交換された方が良いですよ。」と、お客様に予防整備をお伝えしました。お客様は「じゃあ、全て交換してください。」と検査員に言いました。しかし、あいにくブレーキパッドの在庫がなく、お客様に代車を提供して車両を、お預かりする事になりました。

 整備士は、検査員と一緒にお客様との話を横で聞いていましたので、整備士は次の車検車両が入庫して現在のリフトを使用するので間に合わないので、とりあえず自動車のドラムとタイヤを取り付けました。

 しかし、その整備士は「どっちにしろホイール・シリンダカップを交換するのでリヤブレーキ・ドラムを外すだろうと」と思ったので、リヤドラムの割りピンを入れずにドラムを組み、タイヤを取り付けました。

 その後、検査員はブレーキパッド、ホリール・シリンダカップ、ブレーキオイルの見積りをし、お客様と料金のお話をさせていただきました。お客様は、現在のお金の持ち合わせが無く、ホイール・シリンダカップの作業は後日整備をする事になりました。検査員は別の整備士(B)に、フロント・ブレーキパッドの交換の作業指示をしました。整備士(B)はフロント・ブレーキパッドを交換して検査員に完成検査を依頼し、検査員は完成検査を行いました。この時点では、ブレーキ制動などは問題が無く、お客様に納車をいたしました。

 皆さんは、この内容を読まれたらその後どうなったか分かりますよね。そうです、納車1週間後にリヤタイヤとドラムが外れお客様はカンカンに怒ってクレームを言われた訳です。

 これは、一番悪かったのは整備士(A)でしょうか?また、整備士(B)でしょうか?私は、一番悪いと思うのは検査員と思うのです。この状況を横の連結で見れば整備士(A)と整備士(B)が「後のドラムに割りピン入れてないからね。」と一言声をかけていれば回避は出来たかもしれません。しかし、検査員が「中間検査」を飛ばした事によってこの状況が生まれたのも事実です。検査員がきちっと「中間検査」をしてリヤロックナット・割りピンなどがきちっと装着出来ているか、確認をしていればこのような事故は生まれなかったと思います。

 皆さんの会社でも、1度や2度くらいはホイールナットが緩んでタイヤが外れたり、また締め忘れたような気がしてお客様の車庫に締めに行ったことはした事は無いでしょうか?長年しているとあるのではないでしょうか・・・・・・・・?

 ここで、自社の取っている方法を紹介させていただきます。自社では、乗用車・軽自動車のロックナットは全車種そろえております。全車種と言っても意外と種類は少ないです。スズキとホンダの場合は2種類、三菱とニッサンは1種類で合計6種類です。

 お客様と立ち会ってブレーキを説明するときに、ロックナットの場合は全てお客様に説明をして交換をしています。下記にロックナットの交換をお勧めする話法を書いて見ます。

 この話法はお客様と一緒にリヤ・ドラムブレーキを外し、ブレーキシューの残量確認とホイールシリンダのオイルにじみを確認した後に説明をいたします。

 『お客様これはロックナットと言うパーツです。これは、このドラムを取り付けた後に、まん中にナットを取り付けるのですが、このナット1個でタイヤと、このドラムを取り付けているのですが、このナット1個でタイヤとドラムが100キロ以上でも走行しているのです。ドラムブレーキを組み付けた時には、このように先をつぶして外れないようにロックするのですよ。ドラムブレーキを外しますと、毎回先をつぶしていますので、ロックナットの交換をさせてください。1個約200円です。2個使いますので合計400円です。』

 全てのお客様が、「へーそーなんだ。」「知らなかった。」「お願いいたします。」と返答が返ってきます。

 その後、ロックナットの交換の指示を与え、ロックナットを、お客様の目の前で取り付け、ロックナットを潰しロックをします。



 記録簿には「ロックナット」 × として、さらにロックをしたと言う「レ」を記入します。(右記参照)

 こうする事によって、中間検査とリヤのドラムの組み付けが全て完了となり、ドラムの取り付け不良などはなくなります。

 皆さんの工場ではどうですか?完成検査時には、ロックナットの確認は出来ませんよね。上記の方法で当社は作業しております。この事をする事によって監査の時などで「中間検査をこのような形でしています。」と言うことになり、「良くやっています。」と、監査官からお褒めの言葉をいただきます。

編集後記
 皆様の工場では、ロックナットは全てそろえていますでしょうか?当社の部品取引商にロックナットの発注をかけていた所、三菱製のロックナットとニッサンのロックナットは余り出ないんですが・・・と言われました。

 三菱ミニカ・ミニカトッポクラスの場合、ロックナットを交換しないと、リヤハブベアリングの締め付けが多くなり、ハブベアリングにガタが生じ「ゴー」と音が出るはずです。三菱に問い合わせても「ロックナットは全て交換となっていますので交換は必ずして下さい」との返答でした。クレームの前にも処置したいものです。                                  


検査員 ヒデ



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