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Vol.7 スズキの軽四の対策車


 皆さん、こんにちは。「検査員ヒデ」でございます。また、久々の「整備工場現場の知恵」です。7月より、忙しく、中々手を付けられませんでした。
 しかし、車検台数や12ヶ月点検、1台あたりの工賃売上など忙しくとも中々台当り単価が上に上がらないですね。今までは、車検台数と共に工賃売上などがそれなりに上昇していたのですが、2〜3年前からは台数は伸びているが、工賃売上が少しずつ減っているデーターが自社で分ってきました。皆様の工場ではどうでしょうか?
 12月に入り来年に向け、良い状況になるようがんばって行きたいものです。

 さてこの回、「整備工場現場の知恵」でご紹介させて頂きたいものは、スズキ系の「アルト」「Kei」「ワゴンR」などの一部の車種のファンベルトの緩みによるバッテリー上がり、ベルトの交換作業、改善方法をご紹介させて頂きたいと思います。
 まず、今回の車両は、「平成11年9月 GF−HN11S スズキ Kei」です。走行は65,000kmです。この車両は、19年9月に当社にて車検をさせて頂きました。検査時にファンベルトの損傷と緩みが見られ、(エアコンベルトの損傷、緩みはありませんでした。)お客様に「ファンベルトの損傷と緩みが見られるのをお伝えしました。」お客様が、「ファンベルトは半年に前交換をした」とご回答をいただきましたが、「ファンベルトが悪い場合は交換をして下さい。」との返答をいただきましたので、ファンベルトの交換とエアコンベルトの交換をさせて頂きました。
 その6ヵ月後、バッテリー上がりで当社に依頼が入りました。確認のために前回の車暦を確認し、バッテリー持参の上、自宅へ出張いたしました。しかしバッテリー交換後、エンジンのチェックをしたところファンベルトの緩みと損傷が見られました。確認の為に充電系統のチェックをしたところ、電圧が12Vを切っていました。お客様に「充電系統の問題とファンベルトの緩みが原因でバッテリーが上がってしまった」ことの主原因の説明と「前回の車検時にファンベルトが緩んでいたことと、ファンベルトの交換をしたこと」と「何かの原因でこの問題が発生した旨」をお伝えしてお車の再入庫をお願いいたしました。

 車を持ち帰り点検をした所、オルタネーター付近にファンベルトのカスが溜まっていました。(右図参照)この原因はオルタネーターの下部のマウントと上部のマウント(調整用ステー)にオフセットが出来、オルタネーターが若干歪み、クランクプーリーとオルタネーター・プーリーにオフセットが出来、ファンベルトに損傷を与えた事が原因と分りました。
 この事で、スズキのメーカーに問い合わせをした所、「一部の車種、年式でそのような事がある。また、対処方法は・・・」と回答をいただきましたので改善方法をご紹介させて頂きます。

■改善方法は、
オルタネーター・クランクプーリーを「Vベルト型」から「リブベルト型」への変更となります。スズキ・メーカーより改善対策用のセット部品が提供されておりますのでそちらの部品を取り寄せて交換をする事となります。また、部品商などに問い合わせをしても、解答は「そのような部品が存在しません。ありません。」などの回答になりますので、部品番号を直接指定してのオーダーとなります。部品番号は、#17521−82810となります。


■部品セットの内容は(右写真参照)
1. クランクプーリー
2. オルタネータープーリー
3. オルタネーター用下部マウント
4. オルタネーター用上部調整用ステー
5. ウォーターポンプ要プーリー
6. エアコン・コンプレッサーマウント
7. リブベルト
8. その他付属部品

 なお、本セットの価格は8,000円前後(参考価格)で
スズキディーラーから提供されています。


■取り付け方法は、
セットの中に簡単な取付説明書が入っていますが、ここでは写真を交えてご紹介させて頂きます。
1. バンパーの取り外し
2. ファンベルト・エアコンベルトの取り外し
3. エアコン・コンプレッサーマウントの取り外し
4. ウォーターポンプ・プーリーの取り外し
5. クランクプーリーの交換
6. オルタネーターの取り外し
7. オルタネーターマウントの交換
8. エアコンマウントの交換

注意:オルタネーターの取り外しには、マフラー・フロ
ントパイプのズラシ又は右ドライブシャフトの取り外し
が必要です。


 下記に取り付けの注意事項を記載しておきます。ご確認の上、部品の取り付けをして下さい。また、新品部品が余ることはありません。ワッシャーの位置などに注意をして下さい。

 クランクプーリーやオルタネーター、エアコンのマウントは、全体的に3ミリ前にオフセットするようになっています。このために、ラジエータ・ロワホースなども3ミリオフセットするように全体的に組みますので確認をして下さい。
 オルタネーターのステーはそのまま組みます。エアコン・コンプレッサーのステーはワッシャーと組み合わせて全体的に3ミリのオフセットをします。(図1参照 ↑部分)
 ロワホースのマウントを3ミリずつオフセット用のワッシャーを組合して挿入します。(図2参照 ↑部分)
 この時に必ず、同封のボルトを使用してください。また注意としてワッシャーの位置に注意して下さい。ワッシャーは、ウォーターホースのステーとエアコンマウントの間に入ります。
もし、間違った場合は、クランクプーリーと、ウォーターホースが当る可能性がありますので確認をして下さい。

 この度のお客様には、事情をご説明さして頂きまして、部品代のみをご請求させて頂きました。もし、このような部品があるのを知っていれば、余分なクレームの仕事をしなくて済みました。皆様も、多かれ少なかれ整備後のクレームがあるのではないでしょうか?
 ご紹介の様な改善で一つでもクレームがなくなるよう願っております。



検査員 ヒデ



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