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Vol.13 車両診断機

 

 皆様こんにちは。久々の「検査員ヒデ」でございます。昨年度は皆様の事業所の景気はどうでしたでしょうか?秋から年末にかけて、サプライムローンの影響が我々の事業にも影響が出始めてめっきり車両販売も、低迷になってしまいました。検査員をしていても、お客様に予防整備などをお勧めしても、中々厳しい状況でした。「もし車検が通るなら、そのままで結構です。・・・」と、お客様の財布の紐を固く締めていらっしゃいました。
 そう言う時は、請求書や記録簿にメッセージを欠かさずに記入しています。また、出来るだけ詳しく書くようにしています。今後、その車両が入庫したとしても、記録簿や請求書にメッセージを記入しておけば、お客様の修理の内容を聞けば、記録簿や請求書の履歴などをチェックすれば、修理の内容を把握するのに時間がかかりません。またお客様にお話をする時も、事前に「この辺が悪そうです。「以前車検の時に○○が悪いですよ。」とお伝えしましたね。」と修理の内容を濃くお話する事が出来ると思います。また、他の整備工場に入庫したとしても、記録簿などをチェックしてもらえれば、同じ内容の診断がしやすくなると思います。

 

 さて、この回の「現場の知恵」でご紹介をさせて頂きますのは、皆様の工場でも使っておられると思いますが、車両診断機のお話です。車両診断機と言っても幅が広く、診断機メーカーそれぞれに特徴があり良い点や悪い点が多いと思います。
 現在新車に搭載されているのは、ご承知の通り「OBD−II」のエンジンコントロールを搭載したECUで無ければなりません。また高級車になればCAN通信の仕様になっていると思います。

 小話なのですが、このOBD−IIのシステムは、アメリカのカルフォルニア州排ガス規制に合わせてシステムを作ったのが基本となっています。アメリカ車では、1995年までのシステムでOBD-Iと言うシステムがありました。そのシステムに改良を加えていっぱいセンサーを付け、細かな燃料噴射と点火タイミングを調整してクリーンな排気ガスを排出するようにしたシステムがOBD-IIとなったわけです。日本で製造した車をアメリカで販売するのに、OBD-IIシステムの組み込が絶対条件でした。

このOBD-IIシステムは、僕たち整備士にとってはありがたいシステムになった訳です。いっぱいセンサーを取り付けた訳ですから、その分OBD-IIシステムにアクセス出来れば診断が早く、わかり易くなったと思えば良い訳です。

 

 診断機の話に戻りますが、ディーラーでは、自社で販売車両だけを診断出来る診断機を取りそろえればよいのですが、私達のような整備工場では各メーカーの全ての車両を扱っているわけですので、メーカー毎にテスターを揃えなければなりません。診断機メーカーもその辺も分っていますので、各メーカーの診断が出来るようにプログラムを組み込んできています。
 一概にどの診断機が良いとは言えませんが、例えばトヨタ車が多い整備工場では、デンソーの診断機が良いと思いますし、日産が多い整備工場は、日立のテスターが良いと思います。その他診断機メーカーではBOSCH、LAUNCH、テックII、G-Scan、などがあります。

 自社で仕様している物は「LAUNCH X431」です。LAUNCHを買った理由は、価格が安かった事と、当時(5年位前)で最新だった事、取扱メーカーが多かった事が理由でした。現在も使用していますが、使い勝手は問題ありません。

 しかし、少し日本語訳が怪しいので、僕が使っているときは英語バージョンで使用しています。英語の方が意味が分りやすい為にそうしています。欠点は、各バージョンアップや入っていないメーカー毎に$200〜300位支払わなければならない事です。最初は安かったのですが、結局診断が出来ず、診断が出来るバージョンを購入していきましたので、結構高くついたのが現状です。

 先日、Inter SupportのG-Scanのデモを拝見させて頂きました。さすが最新バージョンです。良かったですよ。中でも良かったと思うのが、G-Scanには車両の新車時のデーターが入っている事です。エンジントラブルではあるが、チェックランプは点灯していない状況でもフリーズフレームで新車時とみくられれば、どの当りが悪そうか検討が付きますね。また、メモリーカードに車両情報とデーター情報を落とし込みが出来、パソコンでプリントアウトが出来ますのでお客様に説明が出来やすくなっていると思います。

 

 皆様も診断機をお持ちでしょうが、診断機を有効活用されてはどうでしょうか?自社で行っている事は、現在、診断機を使って診断する場合は、必ず診断費用としてお客様から費用を頂いております。実際には「もらえないよー。」「交換費用や工賃に含んでいる。」と良く聞きます。しかし、最近自社でも多いのですが、診断して見積りまでして結局修理をされないパターンが増えて来ているからです。見積り費用として頂けるお客様もいらっしゃいますが、「そんなの聞いていない。」「初めから言ってよー。」とクレームになる時もやはりありましたので、診断だけをした場合は、例えば「見積り金額の工賃の10%かかりますよ。」とか、「診断機を使用しますので、診断機使用料2,000円かかります。」とか最初にお客様に了解を頂くようにしました。
 それからは、上記の内容のクレームはかなり減りましたので、良かったのでは無いかと思っております。診断機も購入すると最低でも30万円以上にはなってしまいます。30万円の利益を上げるのには、2,000円/台×150台の診断が必要になって来ますので、利益が減るよりは少しでも足しになると思います。
 また、車検時においても、自社では現在しておりませんが、車検入庫時と出庫時の変化を診断機で測定してお客様に数値で確認が出来ればと思っております。新車の数値、入庫時の数値、出庫時の数値をA4サイズなんかでプリントアウト出来れば、整備の内容にお客様もわかり易く、安心出来るのでは・・・と思います。現在、そのようなシステムを導入出来るソフトは無く、今後出来るのでは無いかと思っております。

 

 最後に、自分で思っているのですが、テスターを今後買い替えする時には、上記が出来る事と、最新の情報が手に入る事、バージョンアップが出来るだけ安い事、全メーカーが診断出来る事、が条件になってきます。現状維持費には余りかかりませんが、今後バージョンアップに月々メンテナンス費用がかかったとしても最新バージョンで診断出来ることは、自分にとっても良いですし、車両にとっても良いと思います。

診断料を請求するのは、その為の費用の一部となるわけですし、今後整備には必ず必要になってくるものと思います。今以上に車検工賃も安くするのにも限度があります。また安くなった事で質の悪くなるような車検をすればお客様が離れるようになってくると思います。この度車検をして頂いて、次回車検時には現車検以上に質を良くする事が出来ればお客様離れを抑える事となると思っております。お客様に愛されるような整備工場、整備士を目指したいと思っております。

検査員 ヒデ



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