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 第40回  三菱ギャランフォルティスラリーアートの新開発4B11-T/Cエンジン

三菱自動車工業㈱は、スポーティセダン「ギャランフォルティス」に実用性と快適性はそのままにスポーツドライブをいっそう楽しめるプレミアムスポーティ4WDグレード「ラリーアート」を設定しました(写真1、2)」。

 

写真1.空力性能を追求した三菱ギャランフォルティスラリーアートの外観。エアスクープ&エアアウトレットボンネットフードが象徴的。

 

写真2.キャビン後方の三次元的な気流に対して空気抵抗を減少させつつ高いダウンフォースを発生させるリアスポイラーをマーカーオプションで設定。


同社では、すでに本格的なスポーツ走行を楽しめる4WDスポーツセダン「ランサーエボリューションⅩ(テン)」を発売していますが、新型車は日常走行での快適性とスポーツ走行が楽しめる運動性能を高次元でバランスさせたもので、多様なユーザーニーズに応えたものです。

 ● 新型エンジンの特徴

高性能ながら扱いやすいフラットなトルクとリニアなレスポンスの2LDOHC16バルブ直列4気筒4B11型MIVECインタークーラーターボエンジンです(写真3)。
 このエンジンは、扱いやすさを追求して低~中速トルクを重視した結果、ランサーエボリューションⅩ用のエンジンをベースとして、ターボチャージャーをツインスクロールからシングルスクロールに変更した上で(図1)、専用チューニングを実施しています。この過給圧制御のシステム図を図2に示します。ウエストゲートソレノイドバルブをデューティ制御することでウエストゲートアクチュエータに作用する過給圧を制御します。これによってエンジン運転状態に応じた過給圧を得ることができるのです。

 


 エンジンECU(エンジンコントロールユニット)が、ユニット内のパワートランジスタをONにしてウエストゲートソレノイドバルブが全開になると、ウエストゲートアクチュエータに作用する過給圧が一部リークするのでウエストゲートアクチェータスプリングの設定圧以上に過給圧が上昇しないとウエストゲートバルブは開きません。
 一方、ウエストゲートソレノイドバルブが全閉状態では、過給圧のリークがないのでウエストゲートアクチュエータスプリングの設定圧まで過給圧が上昇するとウエストゲートバルブは開きます。したがって、ウエストゲートソレノイドバルブをデューティ制御することによってデューティ0%から100%の範囲内で過給圧を制御できるのです。

またラジエータ、エアクリーナ(図3)、インタークーラー(図4)の形状およびサイズを最適化しています。
 その結果、最高出力177kW(240PS)/6000rpm、最大トルク343Nm(35.0㎏m)/3000rpmを発揮しながら平成17年排出ガス基準50%低減レベルを達成しています。図5にランサーエボリューションⅩとギャランフォルティス標準車とのエンジン性能曲線比較図を示し、図6に同じく発進加速の比較図を示します。

 

 


 ● ランサーエボリューションⅩおよびギャラン

 フォルティス標準車との共通技術 4B11型MIVEC(三菱自動車の可変バルブタイミング機構付きエンジンの総称)エンジン共通の特徴は、吸気側と排気側のカムシャフトに連続可変バルブタイミングシステムを採用して全域で優れたトルク特性を発揮しながら低燃費にも貢献しています。
 図7にMIVECのシステム構成図を示します。エンジンMの運転状態に応じた最適なバルブタイミングに制御する(バルブ作動角は変わらない)もので、アイドル安定性向上や全運転領域での出力およびトルクの向上を図るものです。
 エンジンECUは、各センサからの信号によってエンジンの運転状況を把握し、その情報を元にインレットオイルフィーダーコントロールバルブおよびエキゾーストオイルフィーダーコントロールバルブにデューティ信号を送りスプール弁の位置を制御します。そのスプール弁の位置を変化させることで油圧を遅角室または進角室に振り分けてインレットカムシャフトおよびエキゾーストカムシャフトの位相を連続変化させます。図8はMIVECの構成部品図を、図9にMIVECの作動概念図(上)とMIVECアクチュエータの作動状況図(下)を示します。
 なおシリンダブロックをアルミダイキャスト製としたことで鋳鉄製よりも軽量であること、後方排気としたことでエンジン搭載位置を下げられるため重心高を下げられるばかりか排気効率を向上させることで排出ガス性能の向上にも寄与しています。


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