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 第45回 ホンダアコードのモーションアダプティブEPS(電動パワーステアリング)

本田技研工業㈱は、1976年の初代から一貫して「人とクルマの調和」をコンセプトに、独自の技術と発想でクルマの本質を見つめ、世界中の人々にクルマの新しい価値を提供してきた「アコードシリーズ」をフルモデルチェンジしました。

 

写真1.ホンダを代表する上級車アコードシリーズの8代目セダンの外観。ウェッジシェイプとワイドスタンスがフットワークのよさを主張するセダン。

 新型アコードシリーズ(セダン/ワゴン)は、8代目にあたり「アドバンスド・クオリティ」をキーワードに、性能や機能を本質から細部に至るまで、徹底的にこだわって質を向上させています(写真1)。この電動パワーステアリング(以下EPSという)も、その一例です。

 ●モーションアダプティブEPSの概要

 一般的には、電動モーターの駆動力でハンドルの操舵力をアシストするもので、車両の走行状況に応じた適切な操舵力制御(車庫入れなどの軽さ重視の制御、高速走行時などではしっかりした重さを持った制御、低速から高速への滑らかな切換えを行う制御)をモーターによって高精度かつ高速度で行っています。
 この基本性能に加えて、モーションアダプティブEPSは、コーナリング時や路面状況の変化などで車両の挙動が乱れた場合、EPSによりステアリングの操舵力アシスト制御を行うものです。VSA(ビークルスタビリティアシスト)と協調して作動し、車両の挙動を安定方向に補正するものです。


 ●EPSシステムの構成と作動

 操舵トルク、車速センサの入力信号を基にモーターの制御を行うEPSコントロールユニット、操舵アシスト力を発生させるモーター、操舵トルクを検出するトルクセンサと操舵を行うラック&ピニオンギアボックスなどで構成されています(図1)。

EPSコントロールユニット:パワー系と制御系およびパワーリレー、フェイルセーフリレーなどの電力素子系の3ブロック構成で、高出力モーターを駆動しながらもコンパクト化を図っています。トルクセンサと車速信号を基にモーターを駆動します。

ギアボックス/モーター:低慣性・高出力の三相ブラシレスモーターを採用しており、ラックシャフトの外周を回転してアシスト力をダイレクトにラックシャフトに伝達しています。伝達機構は、ボールスクリュを採用して伝達効率を高めています。トルクセンサは、インプットシャフトに取り付けられてコンパクト化されています(図2)。

トルクセンサ:操舵トルク路面反力を検出する非接触型可変インダクタンス(自己誘導電圧)方式を採用しています(図3)。これはインプット(ピニオンシャフト)、トーションバー、アウトプットシャフト、コアコンプリート(Comp.)、コイルで構成され、ギアボックスのピニオンギア部に配置されています(そのためピニオンアシスト型電動パワーステアリングともいわれる)。

 ●モーションアダプティブEPS制御

 通常のEPS制御に加え、車両の挙動に乱れが発生した場合に車両が安定する方向に操舵トルクを補正する制御を行っています。この制御は、VSAモジュレータコントロールユニット、ヨーレイト/Gセンサからの情報を基に行われます(図4)。なおこの制御は、VSAシステムまたはヨーレイト/Gセンサに異常が発生したときは制御を停止します。

オーバーステア発生時の補正イメージ:車両の挙動の乱れが納めやすいように操舵トルクを補正して進路の巻込みを制御します(図5)。

アンダーステア発生時の補正イメージ:切り過ぎを抑えるように操舵トルクを補正して進路の膨らみを抑制します(図6)。

左右異なる路面状況での制動時の補正イメージ:車両の挙動の乱れが納めやすいように操舵トルクを補正して制動時の安定性を高めます(図7)。

 


 ●参考:VSAシステム概要

 VSA(ビークルスタビリティアシスト)システムは、VSAモジュレータコントロールユニット、ホイールセンサ、舵角センサ、ヨーレイトセンサ/Gセンサ、VSA OFFスイッチで構成されています(図8)。
 このシステムは、ブレーキとエンジンのトルクダウンを使用して、ABS(アンチロックブレーキシステム)制御、EBD(電子制御制動力配分システム)制御、TCS(トラクションコントロールシステム)制御、VSA(車両安定化制御システム)およびブレーキアシスト制御を行います。またタイプによっては、ACC(アダプティブクルーズコントロール)システム、CMBS(追突軽減ブレーキシステム)が装備されている場合もあり、これらの制御もVSAモジュレータコントロールユニットによって行われます。
 なお、図9にVSA/モーションアダプティブEPSの作動イメージをまとめて示します。


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