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 第52回 レクサスHS250hのハイブリッドシステム

LEXUS(以下レクサス)ブランド初のハイブリッド専用モデルの「HS250h」が発売されました。
このクルマは、レクサスの高級の本質を追求するという理念のもと、その名の由来である「Harmonious Sedan(ハーモニアス セダン)」をテーマに、地球および人との調和に加え、上質との調和も備えています。


写真1.レクサスブランド初のハイブリッド専用車HS250h。
プレミアムセダンとして他に類をみない低燃費を実現している。


 具体的には、ハイブリッドシステムの搭載などによってプレミアムセダンとしては群を抜く優れた燃費性能23.0㎞/Lと高い動力性能を両立しています(写真1)。


 ●HS250hのハイブリッドシステム概要

 2.4Lのアトキンソンサイクル・ガソリンエンジン(2AZ-FXE型)とモーター、トルクを増幅するリダクションギアを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載しています。このエンジンは、プリウスに搭載されたエンジン同様に吸気バルブを閉じるタイミングを遅らせ、少ない圧縮で高い膨張比を実現させることで、熱効率を高めるアトキンソンサイクルを採用したほか、シリンダブロックの真円度の向上によるフリクションロスの低減、燃料噴射制御(EFI)・点火時期制御(ESA)・スロットル制御(ETCS-i)・VVT-i制御などを総合的に高い精度で制御するTCCS(TOYOTA Computer  Controlled System:エンジン総合制御システム)の採用、ハイブリッドシステムとの協調制御などで、動力性能と低燃費を両立させています(図1)。

 このハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンとMG1(Motor Generator №1)、MG2(Motor Generator №2)を内蔵したFF駆動方式のハイブリッドビークル・トランスアクスルとインバータや昇圧コンバータなどを一体にしたパワーコントロールユニットおよびHVバッテリで構成されています(図2)。またハイブリッドビークル・コントロールコンピュータでエンジンとMG2の駆動力による走行とMG1とMG2の発電によるHVバッテリの充電を最適に制御することで、同僚性能と燃費性能を高次元で両立しています(図3)。

 その結果、エンジンの最高出力は110kW(150PS)/6000rpm、最大トルク187Nm(19.1㎏m)/4000rpmを発揮し、モーターは最高出力105kW(143PS)、最大トルク270Nm(27.5㎏m)を発揮していますので、システム全体としての最高出力は140kW(190PS)を発揮します。




 ●ハイブリッドシステムの主要構成部品

 ①ハイブリッドビークル・コントロールコンピュータ:アクセル開度、シフトポジションおよび各種センサからの信号を基に運転状態に応じたエンジン出力およびMG2出力を算出して駆動力を制御します。また、HVバッテリの状態(SOC、電圧、電流値、温度など)を監視し、DC-DCコンバータの出力電圧・HVウォータポンプの吐出量・HVバッテリクーリングブロアの風量を可変制御します(図4)。
 ②ハイブリッドビークル・トランスアクスル:MG1はエンジン出力で発電を行い、MG2はエンジン出力を補助し駆動力を高めます。また発進時などはMG2の動力で走行し、減速時には回生ブレーキによる発電を行います。動力分割機構ではエンジン出力を駆動輪への動力と発電のためにMG1を駆動する動力に分割します。またモータリダクション機構は、MG2の回転を減速して駆動トルクの増幅を行います(図5、6)。
 ③パワーコントロールユニット:MG ECUはハイブリッドビークル・コントロールコンピュータからの出力要求値に従いインバータおよび昇圧コンバータを駆動してMG1・MG2を制御します。またインバータは高電圧の直流電流と三相交流電流の変換を行い、昇圧コンバータはHVバッテリの電圧をDC244.8Vから最大DC650Vへ昇圧します。また逆にMG1・MG2の最大DC650Vの発生電圧をDC244.8Vに降圧します(図7)。
 ④DC-DCコンバータ:高電圧の直流を約DC14Vに降圧して補機類や補機バッテリへ供給します(図8)。なお冷却には車室内空気を利用した空冷方式を採用しています。
 ⑤HVバッテリ:発進時や加速時などにMG2に電力を供給します。MG1で発電した電力や減速時にMG2によって回生発電した電力を蓄えます。SMR(システムメインリレー)はハイブリッドビークル・コントロールコンピュータからの信号によってHVバッテリからの高電圧回路の接続と遮断を行います。電池監視ユニットはHVバッテリの状態信号(電圧、電流値、バッテリ温度)をハイブリッドビークル・コントロールコンピュータに送信します。またHVバッテリクーリングブロアはHVバッテリを適切な温度に保ちます(図9)。
 ⑥HVクーリングシステム:エンジン冷却用クーリングシステムから冷却水経路を独立させてハイブリッドシステム専用のHVラジエータ、HVウォータポンプおよびリザーバタンクなどを設定することでインバータ、昇圧コンバータ、MG1、MG2を冷却する水冷式のクーリングシステムです(図10)。


 ●ハイブリッドシステムの作動

 このハイブリッドシステムの作動は、新型プリウスのハイブリッドシステム(THS-Ⅱ)とまったく同じですので省略します。ただ従来型ハイブリッドシステムに比べ、バッテリのみでの走行可能距離が大幅に延長されていることが特筆できます。

 

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