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 第72回 トヨタカムリに搭載された新型2.5LエンジンとHVシステム

 トヨタ自動車㈱は、北米を中心に世界中で好評を得ているミドルクラスセダン「カムリ」をフルモデルチェンジしました(写真1)。


写真1 世界戦略車トヨタカムリがフルモデルチェンジした。国内販売はハイブリッド車のみ。

 国内では、次世代セダンを担うモデルとして、新型2.5Lエンジンとハイブリッドシステム搭載車のみが販売されます(図1)。

このシステムの特徴は、圧倒的な動力性能と省燃費性能を両立させたことが大きな特徴です。


 ●新型2.5L2AR-FXEエンジン

 ゆとりのある走りを実現するためにハイブリッド専用エンジンを開発しています。このエンジンは、吸排気系統を高効率化して出力性能を追求し、VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を採用することなどで低回転域から高回転域まで全域にわたる豊かなトルク性能を発揮します。

1. 主な新型エンジンの特徴を列記します。
高膨張比サイクル(アトキンソンサイクル)を採用したうえ、冷却効率の高いクーラーを組み合わせたEGR(排出ガス再循環)システムを採用して、高い燃焼効率を実現しています。高膨張比サイクルは、吸気バルブが閉じるタイミングを遅らせて圧縮比よりも高い膨張比を確保して熱効率を高め燃費の向上を実現するとともに排出ガスの抑制にも効果を発揮するものです。またクールEGRシステムは、排気系統から取り出した排出ガスを冷却して吸気系統に再循環させるものです(図2)。
2. 冷却システムに電動式ウォーターポンプを採用して駆動用ベルトとプーリーを廃止してフリクションロスを低下させるとともに軽量化も実現しています(図3)。電動式ポンプは一体構造で、運転状況に応じて冷却水量を制御できるためエンジンの暖機性向上と冷却損失低減に貢献し、燃費の向上につながります(図4)。
3. エンジンの振動を抑えるためにバランスシャフトも採用しています(図5)。バランス量を最適化して室内のこもり音を低減するもので、クランクシャフト№3カウンターウェイトに圧入したギアで直接駆動されます。なおギア騒音を抑えるためにドリブンギア№1と№3に樹脂製のギアを採用したほか、軸受けを小径化して摩擦損失を低減しながらシャフト長も短縮して、世界トップレベルの軽量小型化を実現しています。
4. シリンダブロックの高剛性化を実施するなど骨格構造を最適化することで、振動と騒音を抑え、すぐれた静粛性を確保しています(図6)。
   
 以上のような改良によって、エンジン単体として最高出力118kW(160PS)/5700rpm、最大トルク213Nm(21.7Kgm)/4500rpmの性能を発揮します。


 
 
 
 

 ●ハイブリッドシステム

 新型エンジンと組み合わされるハイブリッドシステムは、リダクション機能付きTHSⅡ(トヨタハイブリッドシステムⅡ)で、3Lクラスのガソリンエンジン車に匹敵する動力性能を確保しながら、低燃費性能も両立させています。
 モーターの最高出力は105kW(143PS)、最大トルクは270Nm(27.5㎏m)で、エンジンと合わせたシステム全体の最高出力は151kW(205PS)を発揮します。
 燃費については、10・15モード走行燃費が26.5㎞/ℓ、JC08モード走行燃費が23.4㎞/ℓで、平成22年度燃費基準+25%、2015燃費基準を達成するとともに平成17年基準排出ガス75%低減レベルの認定を取得しています。
 ハイブリッドトランスミッションは、モーター/ジェネレータ(発電機)/動力分割機構/リダクションギアなどで構成されています(図7)。モーターのトルクを増幅するリダクションギアを採用してモーターの小型化と高出力化を実現しています(図8)。さらにギア比を最適化したギアトレインを採用して低燃費を追求しています。
 そのほか、PCU(パワーコントロールユニット)は、インバータの冷却性能を高めて小型化を実現してDC-DCコンバータと一体化してエンジンルーム内に搭載されています。また駆動用バッテリはニッケル水素バッテリで、後席後方のトランクに搭載され、冷却システムを含めた全体を小型化することでトランクルームを拡大したうえ、トランクスルーできるようになっています(バッテリが邪魔をして従来車では不可能だった)。

 

 ●参考:ハイブリッドシステムの作動

1. 停車時:信号待ちなどの停車時は、モーターとエンジンがともに停止(アイドリングストップ)して、燃料を消費しません。ただしバッテリの充電量が少なくなると、停車していてもエンジンが運転されて発電用モーターを駆動してバッテリに充電します。
2. スタート時:アクセルペダルを踏むとモーターだけで静かにスムーズに走り出します。ただし状況によってはエンジンが運転されている場合もあります。
3. 通常走行時:省燃費で走れるようにモーターとエンジンを最適な効率で駆動させて走行・充電します。ただし低負荷時はモーターのみで走行できます。

4.

加速時:エンジンに加えてバッテリからも動力を供給しますので、駆動力が向上してハイブリッド車ならではの伸びのある加速が得られます。
5. 減速時:車輪がモーターを駆動して発電します。エネルギーを効率よく回収してバッテリを充電します。
6. EVドライブモード選択時:ダッシュボード下のEVドライブモードスイッチを押すと、モーターのみで走行できます。静かなため早朝や深夜などのエンジン音が気になるときに使用すれば便利です。ただし状況によってはEVドライブモードを選択できない場合もあります。

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