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 第73回 ダイハツミライースの低燃費技術“e:S(イース)テクノロジー”

 ダイハツ工業㈱は、このほど新型軽乗用車「ミラe:S(イース)」を発売しました。これは昨今の環境意識や低価格志向の高まりを受け、誰もが乗れる“第三のエコカー”として開発されたもので、開発コンセプトは、エコ(エコロジー+エコノミー)&スマートで、「e:S(イース)テクノロジー(Energy Saving Technology)」の採用でガソリン車トップの低燃費(JC08モード30.0㎞/ℓ)を実現しながら、低価格(79.5万円から)を実現しています。さらにデザイン性や4人がしっかり乗れる広さ、利便性、安全性を兼ね備えたクルマとしています(写真1)。



 ●イーステクノロジーとは?

 新開発のイーステクノロジーとは、パワートレーンの進化、車両の進化、エネルギーマネジメントの観点から従来技術を徹底的に磨き上げ、エネルギー効率の最大化を図ったもので、約40%の燃費向上を実現しました。その内容は、1.パワートレーンの進化、2.車両の進化、3.エネルギーマネジメントに集約できます。


 

 ●パワートレーンの進化

 エンジンは、燃焼効率の向上とエネルギーロス低減を極めた新エンジンを採用しています(写真2)。
 圧縮比を10.8→11.3に向上させたほかインジェクタ噴霧微粒化など8項目にわたる改善で、燃焼効率を向上しています。また燃焼室内のイオンで燃焼状態を検知するイオン電流燃焼制御をEGRに応用したi-EGRシステムを採用して、エンジン特性に合わせて緻密に制御することでEGRガスを大量に送り込み、ポンピングロスを低減しています(図1、2)。
 そのほか、チェーン幅細化による張力低減、ピストンリングの低張力化、オイルシールの見直しなど、細部の改善を積み重ねてメカニカルロスを極限まで低減しています。また軽量な樹脂製電子スロットルボディを採用してエンジンとCVT(無段変速機)の協調制御を速度域に応じて緻密に制御することによってCVTがあらゆる変速比で最良の効率の状態を維持します(図3)。

 CVT(写真3)では、高効率オイルポンプによるオイル排出量の向上や制御圧の低圧化などで動力伝達効率を向上させたほか、走行抵抗の低減や車両の軽量化などを踏まえた変速ギア比(ハイギア化)でエンジン負荷を低減しています(図4)。




 

 ●車両の進化

 シェルボディの骨格などを合理化することによって約60㎏の軽量化を実現しています(図5)。その内訳は、安全性や快適な乗り心地に必要なボディ剛性の維持を前提としたシェルボディの骨格を、骨格部材の配置を見直し、構成部品をできるだけストレート化して補強材を削減し(図6)、さらに高張力鋼板の効果的な配置などの合理化で約30㎏を軽量化しています。またインパネ、ドアトリムなどの樹脂部品の薄肉化やシート骨格の軽量化など内装品の見直しにより軽量化しています。さらにアイドリングストップ用CVTユニットをケースの薄肉化や一部部品のアルミ化、一体化などで軽量化しています。
軽量化やベアリングブレーキに改善などで転がり抵抗を低減するとともにデザイン段階からCAEシミュレーションや風洞実験を実施して、フロントのコーナー形状の改善や床下流速の減速化などを施して、空気抵抗の低減を実現しています(写真4)。

 なおバンパーの開口部やエアクリーナダクトの最適配置化、導風経路の改善でエンジンへの吸気温を低減する熱マネジメントを採用して吸気の体積膨張による吸気量の減少を抑えてエンジンの燃焼効率を向上させています。
 

 ●エネルギーマネジメント

 停車前アイドリングストップ機能付きeco IDLE(エコアイドル)を採用しています。ブレーキをかけて車速が7㎞/h以下になるとエンジンを停止することによって、ストップ時間を延長して燃費を改善しています(図7、8、9)。
 アイドリングストップシステムの専用部品を減らして軽量・コンパクト化を実現しています。エンジン再始動時のナビのリセットなどを防止する補助電源一体型コンピュータにCVT用ECUを統合したり、電動オイルポンプ廃止CVTを採用したり、ヒルスタートシステムをブレーキユニットに内蔵するなどの軽量化を実施しています。
 さらに減速時の車両の運動エネルギーをオルタネータが電気エネルギーに変換してバッテリに回生する機能を進化させています。減速時のオルタネータの発電量を増加させるとともにバッテリの受入れ性を向上させて蓄電量を増加させることによって、通常・加速時の発電量を大幅に抑制してエンジン負荷を低減しています。

 

 

 


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