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 第75回 プリウスPHVとHVの違いは?

新型「プリウスPHV」は、高容量・高出力な新型リチウムイオン電池の採用などにより、満充電状態でEV(電気自動車)として走行するEV走行換算距離(EV走行距離)は26.4km、EV走行とHV(ハイブリッド車)として走行する燃費を複合して算定したプラグインハイブリッド燃料消費率(PHV燃費)は61.0km/Lを実現しています。

写真1 トヨタプリウスPHV(プラグインハイブリッドビークル)の外観は一般的なハイブリッドプリウスと大きな違いはない。



 トヨタ自動車㈱のプリウスのPHV(プラグインハイブリッドビークル)が発売されました(写真1)。これはEV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)の長所を併せ持っているクルマです。具体的には、従来のハイブリッドシステムの長所を活かしながら外部電源から高容量リチウムイオンバッテリ(従来はニッケル水素バッテリ)に充電(プラグイン充電)ができるようにしたものです(写真2)。そのため多くの電気エネルギーが利用できるようになったので電気モーターのみによる走行(EV走行)の領域が拡大し、航続距離を延長させて環境性能の飛躍的な向上を達成しています。
 またプラグイン充電した電力を消費した後は、低燃費のHV車として走行できるのでEVのようにバッテリ切れの心配もなくロングドライブもできます。


 

 ●PHVの主な特徴

 プリウスPHVの特徴をまとめると、次のようになります
(図1)。
1. 長距離や高速走行時には、エンジンと電気モーターを併用する従来のHV車と同様のHV走行ができるのでEVに比べ移動範囲の制約がありません。
2. HVバッテリのSOC値が高い場合はEVモードで走行し、SOC値が低下すると自動的にHVモードで走行します。
3. 走行モードの切換えはEVドライブモードインジケータランプが点灯状態から点滅し消灯するか、マルチインフォメーションディスプレイのEV走行可能距離の消滅でドライバーに知らせます(図2)。
4. EV走行できるバッテリエネルギーが残っている場合は、EV/HVモード切換えスイッチ(インテグレーションコントロール&パネルサブアッシー)によってEVモードからHVモードに切り換えることができます。
 

 ●PHVの機構上の構造

 プラグインチャージコントロールシステムとして、家庭用コンセントなどの外部電源からの電力をHVバッテリに供給する方式を採用し、充電ケーブル(エレクトリックビークルチャージャケーブルASSY)、充電インレット(エレクトリックビークルチャージャケーブル)、EVチャージャ、プラグインチャージコントロールコンピュータASSY、バッテリボルテージセンサ、HVバッテリ、パワーマネージメントコントロールコンピュータから構成され、漏電などの異常を監視しながらHVバッテリを充電します(図3)。
HVバッテリは、エネルギー密度の高いリチウムイオンバッテリを使用した高容量のHVバッテリを採用しています(写真3)。エンジン停止時のMG2(モーター)による走行およびプラグイン充電や回生ブレーキでのエネルギー蓄積体としての役割を果たします。
PHV車は、一般家庭用のAC(交流)コンセント(100V/200V)と専用の充電ケーブルを用いて外部充電ができるように設計されています。

 ●PHV車の作動

 プリウスPHVの作動のイメージは、次のとおりです。
1. 充電時:AC200V電源なら約90分で満充電にできます。
2. スタート時:アクセルを踏むとモーターで発進します(諸条件でエンジンが作動する場合もある)。
3. 近距離走行時:26.4㎞まではモーターで走行できます(100㎞/hを超えると自動的にエンジンが始動)。
4. 遠距離走行時:モーターとエンジンを最適な効率で走行します(EVモードに必要な電力を使い切ったらHVモードに自動切換え)。
5. 停車時:アイドリングストップしてガソリンを消費しません(エアコンは使える)。
6. 加速時:バッテリからもパワーが供給され、さらに駆動力が向上します。
7. 減速時:車輪がモーターを駆動して発電し、減速時のエネルギーを効率よく回収してバッテリに充電します。
8. EVモード復帰時:長い下り坂を走行した後など、減速時のエネルギー回収・充電によってバッテリ容量が一定値以上回復した場合はEVモードに自動的に復帰します。
 

 ●リチウムイオンHVバッテリ

 充電ができるようになったことがもっとも大きな相違ですが、HVバッテリも大きく変更させています(図4)。4個のHVバッテリスタック、バッテリボルテージセンサ、HVジャンクションブロックASSY、アルミフレーム、2個のバッテリクーリングブロアASSYおよびサービスプラググリップ(高電圧回路の遮断を行う)から構成されています。定格電圧3.7Vの小型・軽量のリチウムイオン電池セルを採用して高出力化を図っています。またスタックは、14個の電池セルをバスパーモジュールで直列接続することで1スタック51.8Vの電圧を確保しています。さらに4個のスタックから構成されており、バスパーモジュールで直列接続することで207.2Vの高電圧を確保しています。
 なおこのPHVでは、最大DC650Vの高電圧を使用していますので、取扱いを誤ると感電、漏電などにつながる場合があります(図5)。この回路の点検・整備を行う場合は、必ず修理書を参照して行わなければなりません。

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