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2024年度の新車販売 3年連続増もコロナ前には届かず


2024年度の新車販売 3年連続増もコロナ前には届かず

 業界団体が発表した2024年度の新車販売台数は、前年度比1.0%増の457万5705台とわずかではあるが3年連続で増加した。型式認証不正の影響は残ったものの、24年(前年比7.5%減)に比べると回復のペースが早まった形だ。一方、海外に目を向けると、米トランプ政権が全世界からの輸入品に「相互関税」を課すとともに、輸入自動車に対し25%の追加関税の適用を始めた。米国への輸出が減れば、国内向けの供給が増える可能性もある。

 24年度の登録車の販売台数は前年度比1.6%増の294万8294台、軽自動車は同0.1%増の162万7411台(日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会まとめ)といずれも増加した。

 車名別販売台数では、ホンダ「N-BOX(エヌボックス)」が3.5%減となりながらも、21万768台と唯一、20万台以上を販売して4年連続で1位となった。2位はトヨタ「ヤリス」、3位はスズキ「スペーシア」、4位はトヨタ「カローラ」、5位はダイハツ「タント」だった。

 ブランド別では、トヨタが1.2%減、ダイハツが同1.9%減と型式認証不正の影響は残ったが、暦年に比べるとマイナス幅は大幅に縮小した。3月の販売(登録車、軽自動車合計)は前年同月比10.7%増の49万9745台で、トヨタが同16.2%増、ダイハツが3.4倍と大幅に増加し不正の影響から脱却しつつある。

 とはいえ、コロナ禍前の19年度(503万8727台)レベルには届かず、5年連続で500万台を割り込んだ。半導体不足による供給制約もすでにほぼ解消されたが、国内市場はコロナ禍前の水準を取り戻すには至っていない状況だ。物価高によって新車の需要が弱まっているのか、あるいは円安を背景に、メーカーが国内の生産能力を輸出用に優先して振り向けているのかは不明だ。

 25年度は米トランプ政権の高関税政策により、国内の商品供給に変化が起きる可能性がある。米政府は4月3日から輸入自動車に対し、一律で25%の追加関税を適用した。日本からの輸入車には、これまで乗用車に2.5%、トラックに25%の関税をかけており、追加関税で乗用車は27.5%、トラックは50%となる。追加関税は自動車の主要部品にも5月3日までの間に適用される予定だ。

 日本の自動車メーカーは1980~90年代の自動車摩擦以降、米国での生産に大きな投資を行い、雇用拡大にも貢献してきたが、今回の関税引き上げは、こうした努力が完全に無視された格好だ。メーカーは米国での車両価格を引き上げざるをえなくなり、価格競争力の低下から輸出を減らす可能性がある。実際、日本自動車工業会は、自動車メーカーの生産調整により影響を受ける部品メーカーへの支援を政府に要請している。

 日本では約900万台の自動車生産台数のうち半分が輸出で、そのうちの3割が米国向けとなっている。高関税が課された状態でシェアを維持するには、日本からの輸出を米国での生産に切り替える必要がある。また、他の地域への輸出を増やすことで、日本の生産規模を維持するといった対応をとる可能性もある。

 トランプ関税による影響はメーカーによっても異なる。トヨタは米国だけに頼らない輸出構造を持っており、米国が関税を引き上げても影響はそれほど大きくないとされている。ホンダも日本からの輸出はほとんどない。影響が大きいとされるのは、マツダやスバルなど、輸出に占める米国向けの割合が大きいメーカーだ。こうしたメーカーもトヨタ以外のように仕向け地の分散が必要になるとみられる。そうなれば、日本国内向けの供給も増え、市場規模が再び500万台水準に戻る可能性もある。

 トランプ政権の政策は、自由貿易を前提とした分業体制で成り立ってきた自動車産業の構造を大きく変える可能性がある。トランプ大統領が4年の任期を終えた後も、米国の保護主義は続くとの見方も出てきており、日本市場も米国の“変貌”の影響から無縁でいられなくなりそうだ。





 




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