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西川氏辞任で日産はどこへ?


西川氏辞任で日産はどこへ?

 日産自動車西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)が9月16日付で辞任した。西川氏といえば、不正報酬問題で前会長のカルロス・ゴーン氏を放逐した本人そのものだが、自分も報酬の不正受領で足元をすくわれた。西川氏に同情する声は少ないが、ルノーと渡り合えるという意味では、今の日産に西川氏以外の人材は見当たらない。10月末までに決定するという後任社長には、日産の経営立て直しに加え、ルノーからの自立の維持という二つの課題がのしかかる。
 西川氏が突然辞任する事態に至ったのは、ゴーン氏とともに逮捕(現在は保釈)されたグレッグ・ケリー元副社長が週刊誌に語った証言が発端だ。日本ではあまり一般的でない株価連動型インセンティブ受領権(SAR)という業績連動型報酬で不正に4700万円を受領していたという。日産が社内調査した結果、西川氏ほか元取締役2人、元・現執行役員4人に対して不正な支払いがあったことが判明したという。
 日産の取締役会は、西川氏の「自分の指示でやったことではない」と証言したことを受け入れ、当初、即座の社長辞任までは要請しなかったという。ところが、意外なところから情勢が急変。3年ぶりの発行を予定していた2500億円の社債が西川氏のスキャンダルによって発行できない、という事態に至った。慌てた日産は9日に取締役会を開き、西川氏に即座の辞任を要請、16日付の辞任を西川氏が受け入れた。
 西川氏はゴーン事件の責任をとって、日産再建のめどが立ったら自らも辞任する意向を示していた。社長の座に連綿としているようにも見えた西川氏だったが、今回ばかりは受け入れざるを得なかったというわけだ。西川氏は9日夜に行われた社外取締役4人による記者会見の後に姿を見せたが、謝罪はせず、自分が想定していた辞任時期の一番早いタイミングでの辞任になったと強弁した。
 西川氏の後任社長が誰になるのか。人選は本格化していると見られるが、結論を出すのは容易ではなさそうだ。社外取締役で構成する指名委員会は後任社長の条件を「自動車産業に精通し、アライアンスにも理解がある人物」などとしているが、そもそも日産には後任が育っていない。日産の社長を狙っていたカルロス・タバレス氏やアンディ・パーマー氏らはゴーン氏が日産の社長を後進に譲る気はないと見るや日産を去った。西川氏が社長に昇格したのも、ゴーン氏が三菱自動車の会長も兼務しなければならなくなったためだ。その西川氏が社長に就任するやいなや、完成車問題の内部告発、ゴーン氏のスキャンダルなど過去の問題が噴出した。
 日産の状況をより深刻にしているのは業績の悪化だ。量の拡大を重視するゴーン路線の後遺症が今期の業績にもろに出始めている。日本だけでなく海外の主要市場で、新型車どころか、主力車のモデルチェンジも行わないという状態が続いているためだ。
 2019年4〜6月期の決算は、売上高が前年同期比12.7%減の2兆3724億円、営業利益が同98.5%減の16億円まで落ち込んだ。最も足を引っ張っているのが米国だ。16年に米国市場がピークを迎えた局面で、他メーカーは慎重に生産調整を行ってきた。しかし、あくまでスケールメリットを重視するゴーン体制下の日産は、市場が変調しているにも関わらず、生産を続けた。積み上がった在庫を一掃するための安売りで利益率が大幅に低下している。
 こうした事態を招いたのは、ゴーン体制下の日産が短期の利益ばかりを追い求め、商品への投資を怠ってきたからに他ならない。電気自動車や自動運転技術といった先進技術の開発には熱心だったが、肝心の商品開発がおざなりでは、トヨタやホンダといった競合他社には勝てない。ルノーとのアライアンス効果を最大化することが必要とはいえ、商品への投資を後回しにしてきたことは、日産経営陣の失策だったと言える。
 西川氏の後任は社内外を問わず検討されている模様だ。望ましいのは社内からの昇格だが、現在の役員の顔触れを見ても、それらしい人物は不在で、 社長代行の山内康裕COO(最高執行責任者)がそのままスライドすることもあり得る。 もっとも、指名委員会には木村康氏、永井素夫氏、井原慶子氏ら日産の社外取締役4人に加え、ルノーのジャン・ドミニク・スナール会長が名を連ねている。ルノーが自社に都合の良い人物を指名してくる可能性が高い。ただ、日産の業績を上げなければ、ルノーの業績にも影響が出てくる。それだけに、次期日産社長には、日産を正常化できる手腕が強く求められる。




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