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日産、eパワー用エンジンで熱効率50%を実現


日産、eパワー用エンジンで熱効率50%を実現

  

 日産自動車 が発電に特化することで熱効率50%を達成するガソリンエンジンの技術にめどをつけたと発表した。現在のガソリンエンジンの熱効率は、最も高いものでも40%だが、独自のシリーズハイブリッドシステム「 eパワー 」用として、発電に特化することで10%向上させる。

日産はカルロス・ゴーン社長時代、電気自動車(EV)を全面に押し出す一方、ハイブリッド車(HV)には距離を置いてきた。今後はeパワーをEVと並ぶ「 脱炭素 」技術のもう一つの柱と位置付け、技術開発を推進していく。

 2月26日にオンラインで説明会を実施し、発表した。エンジンの熱効率は最新のエンジンでも40%で、30%から40%に向上させるのに50年かかっている。平井俊弘専務執行役員は「eパワーでは、この数年で50%まで高めようと開発を続けてきた」と述べた。

50%という数値の意味について平井氏は、「 内燃機関 に携わってきた我々としてのチャレンジングな目標という意味がある。内燃機関の役割を変えることにより、達成できるかもしれないと考えた」と説明した。熱効率50%を達成すると、製造段階も含めた二酸化炭素(CO2)排出量が、日本でのEVのCO2排出量とほぼ同等になるという。

 今回、発表した技術は 「STARC」(ストロング・タンブル・アプロプリエイトリー・ストレッチド・ロバスト・イグニッション・チャンネル) というもので、リーンバーン(希薄燃焼)や高EGR(排出ガス再循環)により、高希釈燃焼の中でも安定した燃焼を実現するという技術だ。

具体的には、シリンダー内につくる強い渦(タンブル)を、ピストン上昇時、なるべく壊さないように保持し、点火プラグ部の流速を安定化させる。これにより、点火プラグ部からの放電チャンネルが適度に伸長し、燃焼が安定するという。先行技術開発部の鶴島理史主幹は、「1秒間に20回、同じ風をプラグ部に吹かせる技術」と説明した。

 日産はSTARCによって、エンジン単体の熱効率を46%まで向上することを実機で確認し、排熱回収を組み合わせることで48%まで高めることが可能としている。さらに、将来的にはバッテリー技術の進化により、エンジンを完全定点運転させることによる圧縮比の向上、フリクション低減で50%に到達するとした。

鶴島氏は、「脱エンジンが加速する情勢にあって、内燃機関の技術開発が必要なのか、というネガティブな声も聞かれるが、それぞれの領域のエキスパートが、お客様に、より良い燃費で乗っていただける楽しい車を届けたいという思いで開発を続けてきた」と述べた。平井氏は「熱効率50%というのは、燃焼と点火を究極まで設計し尽くすということ。地味だが、こういう技術がなければ カーボンニュートラル は達成できない」と語った。

日産は1月、2050年のカーボンニュートラルに向け、30年代の早い時期に日本、米国、欧州、中国で発売する新車のすべてを電動化すると発表。この中で、エネルギー効率を向上させたeパワーを開発するとしていた。

 eパワーは「ノート 」に初めて搭載して日本で発売し、昨年はアジアの一部に投入した。今後は投入地域を拡大するとともにセグメントも広げていく方針で、21年夏には欧州でSUV「キャシュカイ」に搭載して発売する。キャシュカイには 可変圧縮比 (VCR)エンジンの技術を適用したエンジンを搭載し、システムのサイズアップを抑えながら、高出力化する。

日産は、今後、eパワーとEVの二本柱で脱炭素を進めていく方針も示した。eパワーではSTARCを適用した発電専用エンジンを搭載して燃費を向上する。EVでは再生可能エネルギーとの組み合わせにより、製造・使用・廃棄のライフサイクル全体でCO2を削減し、それぞれカーボンニュートラルに近づけていくとしている。再生材料利用、電池の再利用でもCO2を減らす。

トヨタ自動車やホンダはHVとEVに加え、プラグインハイブリッド車(PHV)や燃料電池車(FCV)も含めて電動車を開発している。これに対し日産は、eパワーとEVに研究開発を集中し、PHVやマイルドHVは、ルノーや三菱自動車とのアライアンスによって補完するとしている。eパワーでは、モーター駆動ならでは乗り味と操縦感覚を全面に打ち出し世界に展開していく方針だ。EVで苦戦が続いてきた日産だが、独自のハイブリッドシステムを携え、世界で進む電動化の流れに挑む。




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