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トヨタが富士重に増資、富士重は軽生産から撤退


2005年10月にトヨタ自動車との提携を発表した富士重工業が4月10日、トヨタからの増資受け入れと軽自動車の生産から撤退することを発表した。富士重はトヨタとの提携発表後、米国・SIA(スバルオブインディアナオートモーティブ)でトヨタ『カムリ』の受託生産を始めている。今回の発表内容は、富士重の懸案だった軽自動車事業からの撤退という大きな決断を含んだものであり、軽との引き換えにより、トヨタとの関係を自ら大きく前進させることになる。今回の増資によりトヨタの富士重への出資比率は16.5%まで高まる。トヨタは、富士重の水平対向エンジン技術を高く評価しているが、一方で富士重の持つ航空機事業にも関心を寄せているとも見られる。

 トヨタと富士重は05年10月の提携発表で、トヨタが富士重に8.7%を出資することで合意。その後、SIAでのカムリの生産開始、トヨタグループであるダイハツ工業から富士重への小型車『ブーン』のOEM(相手先ブランドによる生産)供給(富士重は『ジャスティ』として欧州で販売)を開始している。

 今回の発表内容は、富士重が軽の生産から撤退するとともに、トヨタと共同開発する小型FRスポーツを生産するための新工場を、群馬製作所大泉工場(群馬県・大泉町)の隣接地に建設するというもの。新工場は2011年末に稼働する予定で、軽を生産している同製作所本工場(群馬県太田市)は段階的に生産を減らし、最終的に生産を終了していく。スバルブランドの軽はダイハツからOEM供給を受けることで販売は継続される。トヨタが増資する311億円あまりは新工場の建設資金に充てられる。

 富士重にとって、軽自動車事業からの撤退は大きな決断だ。同社初の軽自動車「スバル360」は、1960年代のマイカーブームの火付け役になった名車として今も語りつがれている。スバルの軽には今も根強いファンがいる。しかし、日産自動車の軽販売参入、日産と三菱自動車、スズキとの軽OEMなど、軽自動車をめぐる業界再編が進む中で、富士重の軽事業は取り残された格好。利幅が小さい軽自動車では、販売・生産のボリュームを確保することが最低条件となるが、スズキ・ダイハツの熾烈な販売競争が定常化した軽自動車業界で、スバルは軽で十分な販売ボリュームを確保することができなかった。「R2」「R1」で先進性のある軽自動車にもチャレンジした同社だが、背高ワゴンが中心の軽のなかで、スタイリング重視でスペース効率の不利なこれらのモデルは、十分な販売量を確保することができなった。業販も含めた販売網の弱さも敗因だった。

 富士重はゼネラルモーターズ(GM)との資本提携を05年10月に解消。即、トヨタの出資要請に応じた。地球温暖化、原油高・資源高という経営環境の中で、自動車メーカーは環境・エネルギー問題に対応していくことが生き残りの必須課題になってきた。富士重の事業規模でこれらの問題に単独で対応することは難しく、トヨタの傘下に入ったことは同社にとっても必要な選択だったといえる。

富士重にとり、水平対向エンジンや四輪駆動技術に代表される同社固有の技術があったことは、トヨタとの提携に有利に働いたといえる。また、トヨタが過去にチャレンジして失敗した航空機分野の技術を富士重は持っており、富士重への高い評価は、本当は航空機にあるという見方もある。トヨタは三菱重工による国策事業「MRJ」(ミツビシリージョナルジェット)に対する出資要請にも応じている。ホンダがビジネスジェットを米国で事業化していることもあり、トヨタは航空分野への関心をいまだに失っていないと見られているからだ。

 トヨタは、富士重の経営の独自性を尊重しながら、協力関係をどう築いていくのか。「レガシィ」の一本足打法と言われて久しい富士重は、トヨタの規模の論理に呑みこまれずブランドの独自性を保っていけるのか。トヨタはダイハツや日野自動車に対しては、最初の資本提携から、かなりの時間をかけて過半数の株式を取得した。だが、世界の市場構造が大きく変化し、トヨタは開発のスピードアップ、生産の柔軟性をさらに追及しようとしている。将来、役員の派遣、さらなる増資により、富士重を自らの世界戦略に完全に組み込む時期が来るのもそう遠くないことかもしれない。




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