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  第11回 ISO9001(その7) - 「新商品開発プロジェクト」

 引き続き今回も、ISO9001規格の「第7章 製品実現」の規定についてです。その中でも、新しい製品や新しいサービスの導入検討をする際に必要となる「設計・開発」についての要求事項を解説します。

 自社製品を持っている製造業者には必ず設計・開発の業務が存在します。例えば、自動車メーカーなら新型車の設計図面を描く、試作車を作って性能を評価する、などが設計・開発です。ただし、小売業者が単に新発売の商品を取り扱っただけなら、この設計・開発には該当しません。例えば、自動車ディーラーが新型車を販売しただけの場合などです。

 だから設計・開発と聞くと、特に小売・サービス業の方々にはウチは関係ないと思われるかも知れませんね。しかし、皆さんの会社でも顧客に提供しているサービスが、いつまでも同じということはないはずです。ISO9001規格では設計・開発という言葉を使っていますが、どんな小さなサービスでも、これまで自社で行っていなかった新しいサービスを企画して導入する場合を想定してください。(これがサービス商品の設計・開発です!)新製品や新サービスの設計・開発は、事業成長のためには欠かせない活動です。

 ただ、この「設計・開発」に関する規格の要求事項の解釈はやや難解で、しかも自社の業務にどのように当てはめたらよいかと迷うことが多いはずです。この点は信頼のおける専門のコンサルタントに相談されるといいでしょう。

 以下は、文末の図1に示した「設計・開発の体系」を見ながら読み進めてみてください。


設計・開発の計画

 新しい商品を企画してから実現するまでの過程には、いくつかの段取りが必要になります。まずは、いつ・どのような段取りが必要になるかを「計画書」に描いてみる必要があります。その計画の中には、進めていく途中段階で必要になる評価活動などを明示します。さらに担当する人が複数になる場合は役割分担も決めておきましょう。

設計・開発へのインプット

 新商品に取り入れなければならない条件や目標を「インプット」といいます。これには、機能・性能に関する点、適用される法令・規制に関する点などがあり、「企画書」や「目標仕様書」などの名称で文書化しなければなりません。


設計・開発へのアウトプット

 新商品の設計・開発を行った結果として発生するものを「アウトプット」といいます。何をアウトプットと定義するかは様々な考え方がありますが、一例を次に示します。

  ・機械製品の場合 : 製品図面、強度計算書、構成
    部品一覧
  ・ファッションデザインの場合 : 意匠スケッチ、材料明細
  ・レストランの場合 : 調理のレシピ
  ・スポーツ用品店の場合 : 季節キャンペーンの業務
     用パンフレット
  ・リハビリテーションセンターの場合 : リハビリ実施
                            手順書

 さて、皆さんの会社の新商品には、どのようなアウトプットが生じますか? 

 また、これらのアウトプットは、設計・開発の後工程である新製品を製造する人、または新サービスを提供する人に対して情報を与えるものであり、製品・サービスの品質基準が含まれていなければなりません。さらに、安全で適切な使用のために必要な注意事項もあれば、アウトプットの中で明確にすべきです。


設計・開発のレビュー

 設計・開発の進行過程において、期待している結果が得られそうかどうかを評価することを「レビュー」と呼んでいます。このレビューの場においては、設計・開発を担当する当事者だけでなく、なるべく多くの関係者を参画させ、問題があればその処置方法を明確にする必要があります。


設計・開発の検証

 設計・開発業務の結果としての「アウトプット」が「インプット」で決めた目標や条件を満たしているかどうかを判断することを「検証」と呼んでいます。レビューと同じく、問題があればその処置方法を明確にする必要があります。


設計・開発の妥当性確認

 実際の新商品が、顧客の要求に適うかどうか、または市場に受け入れられるかどうかを評価することを「妥当性確認」と呼んでいます。これは可能であれば、顧客や市場に新商品を引渡し/提供する前に、実施しなければなりません。例えば、顧客立会いのもとで最終品での品質確認会をする、正式発売前にモニター販売をする、モニター体験サービスをするなどです。レビューや検証と同じく、問題があればその処置方法を明確にする必要があります。


設計・開発の変更管理

設計・開発の変更が生じた場合は、その内容や履歴を適切に記録して管理しなければなりません。変更に伴って必要となるレビュー、検証、妥当性確認も実施しましょう。場合によっては、その変更が関連する製品・サービス、さらに販売済みの製品に影響がないかも評価する必要があります。


 ここまで述べた項目の関連性を示した図1を、あらためてよく眺めてみてください。

 特に評価活動であるレビュー、検証、妥当性確認の違いを理解できましたでしょうか。とても単純な製品・サービスであれば、設計・開発の段取りもシンプルなため、これらの評価活動をまとめて一度に実施することもあり得るでしょう。




図1  設計・開発の体系


アイエル経営診断事務所 代表
板 賀 伸 行
経営コンサルタント(中小企業診断士)
ISO/QMS 主任審査員

過去に大手自動車会社において海外各国の自動車開発・生産プロジェクトを担当。その後、コンサルティング会社等を経てアイエル経営診断事務所を設立、中小企業の経営支援を開始。国や地域の中小企業支援センターのアドバイザーも務める。
経営資源の少ない小規模事業者のビジョン実現をサポートできる今の仕事に生き甲斐を感じています!
趣味はアウトドア系なら何でも関心があり、毎年新しいチャレンジ(冒険?)をしています!



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